カトリック教会、同性愛者への姿勢に変化

ローマ(CNN) ローマ法王庁は26日、同性愛者やその家族などへの対応を巡り、世界各国の司教協議会に対する調査結果をまとめた文書を発表した。文書では、同性愛者は敬意を持って扱われ、その子どもたちの洗礼も認められるべきだとされ、同性愛者に対する教会側の姿勢の変化が示された。
文書では、同性愛に関する教えは変わらないとする教会の立場を提示。一方で、昨年7月にフランシスコ法王が、自分は同性愛者を「裁く立場にない」と述べた発言にも沿った形になった。
同性婚については認められないとするものの、教会側が「家族に関する教会の教えと、そうした関係のもとで暮らす人々に対して敬意をもち一方的な判断を下さないという姿勢の間でバランスを取るよう努めている」と記述した。
また教会内には「教会の道徳的教えを守ると同時に、こうした人々を慈悲の精神で受け入れるという難問に、ある種の困惑」がある点も認めた。
今回、発表された文書は「討議要綱」と呼ばれるもので全75ページ。世界の114の司教協議会に対して調査が行われ、回答率は85%だった。10月に予定されているシノドス(世界代表司教会議)で議論の材料とされる。

同性愛カップルの合同結婚式、「ワールド・プライド」 トロント

【6月27日 AFP】カナダ・トロント(Toronto)で20日~29日まで開催されているLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の権利拡大を訴えるイベント「ワールド・プライド・ウイーク(World Pride Week)」の一環で、同性愛カップル115組が参加する合同結婚式が26日、開催された。

 市内中心部にある邸宅「カサ・ロマ(Casa Loma)」の庭園で開催された合同結婚式には、ノーム・ケリー(Norm Kelly)トロント副市長も出席した。

 オーストラリア・メルボルン(Melbourne)から参加したコリン・ガンサー(Collin Gunther)さんは、パートナーのリチャード・ラスレット(Richard Laslet)さんとの37年間待ち望んだ愛の誓いを交わした。

 異国でドラマチックな瞬間を迎え、感情の高まったガンサーさんとラスレットさんは、いつかは自分たちの結婚が母国でも認められる日が来ると信じたいとし、「母国に帰った後、たとえ私たちの結婚が認められなくても、私たちはお互いを夫と呼ぶよ」と述べた。

 カナダでは、2005年6月に同性婚が合法化された。世界では15か国で同性婚が認められている。(c)AFP/Michel COMTE

ユタ州の同性婚禁止法は違憲

【6月26日 AFP】米コロラド(Colorado)州デンバー(Denver)の連邦第10巡回控訴裁判所(高裁)は25日、同性婚を禁止したユタ(Utah)州の法律について、違憲との判断を下した。連邦最高裁が2013年6月に結婚を男女間に限定した連邦法「結婚防衛法」を違憲と判断したことを受けて、米国では同性婚解禁の動きが広がっている。ユタ州は上訴するとみられ、裁判は最高裁までもつれ込む見込みだ。

 厳格なモルモン教徒の多いユタ州では昨年12月、連邦地裁が同性婚禁止法を違憲とする判決を下したが、その後、州政府の要請を受け、1月に最高裁が同性婚の一時停止を命じていた。州政府はこの間に結婚した同性カップル約1300組の承認を拒否しているが、米連邦政府は同州の同性結婚カップルに支援を表明している。(c)AFP

京都のホテルと古刹(こさつ)が手を組み、同性のカップルが挙式するプランが海外で注目を集めている。ホテルグランヴィア京都(京都市下京区)と臨済宗の「春光院」(同市右京区)が今春、観光も兼ねたプランを海外向けに売り出した。同性愛に寛容な欧米で反響を呼び、問い合わせが相次いでいる。

 プランは3泊4日で、1590年創建の春光院の本堂で式を挙げる。白無垢(むく)か紋付きはかまが選べる和装の貸衣装や和懐石、送迎などが付いて料金は77万7000円だ。新郎新婦の宣言では、2人らが「パートナー」「ハズバンド(夫)」「ワイフ(妻)」などの言葉を使って愛を誓う。海外向けのプランだが、国内でも受け付ける。

 春光院では、プランのスタート前に既に海外の同性カップル5組が挙式している。最初は4年前。春光院で座禅を体験したことのあるスペイン人の女性カップルから寺で挙式したいと依頼され、受け入れた。米国に7年間の留学経験がある副住職の川上全龍さん(35)に、同性愛者は身近な存在だった。川上さんは「日本の仏教には同性愛を禁じる教えはないし、周囲のサポートが大事だ」と考え、短文投稿サイト「ツイッター」やブログで式の様子などを発信してきた。

 一方、ホテルグランヴィア京都は2006年、レズビアンやゲイなど性的少数者「LGBT」の人たちに利用してもらおうと、「国際ゲイ・レズビアン旅行業協会」に国内のホテルで初めて加盟し、社員研修も続けてきた。LGBTの受け入れをアピールしようと、この結婚式プランを発案し、昨年秋に春光院に話を持ちかけて実現した。

 ドイツで今年3月に開かれた旅行博覧会にホテルグランヴィア京都がブースを出店した際、現地のテレビ局や新聞社から取材が殺到し、「日本では同性愛が認められるようになったのか」などと質問攻めに遭った。プランは京都などの観光旅行に含まれており、海外の旅行会社などから計33件の問い合わせが寄せられた。

 日本では同性同士の結婚は認められていない。川上さんは「同性愛者でも皆、普通の結婚や生活をしたいはずだ。今は支援者も少ないかもしれないが、今後は動きは変わっていくのではないか」と期待する。【椋田佳代】

シリコンバレー時事】任天堂米国法人は9日、人気ゲーム「トモダチコレクション 新生活」でプレーヤーの分身(アバター)の同性婚ができず、見直しを求める声が強まっている問題で、声明を発表し、謝罪した。来月6日に発売する米国版「Tomodachi Life(トモダチライフ)」で設定を修正するのは不可能としながらも、続編を出す場合には同性婚ができるように開発を進める意向を示した。

この問題をめぐっては米国の同性愛者やその支援者などの間で見直しを求める声が高まり、任天堂は声明で「多くの人々を失望させた」と謝罪。技術的に大幅な修正を伴うため、「今回は変更は不可能」としたが、続編を出す場合には「ゼロからデザインし、すべてのプレーヤーをより良く表現する」と表明した。

ブルネイが同性愛者に対して、石による撲殺での死刑を決定。それを受けて多くのファッションデザイナーが、国王がオーナーを務めるホテルグループ「Dorchester Group」のボイコットを表明

ブルネイ国王が、同性愛行為に対する刑罰を10年間の懲役刑から、石による撲殺での死刑へと改定したことを受けて、多くのファッションデザイナーは、ブルネイ国王がオーナーを務める巨大ホテルグループ、Dorchester Group (ドルチェスター・グループ) の宿泊施設へのボイコットを呼びかけている。

フットウェアデザイナーの Brian Atwood (ブライアン・アトウッド) は、「わたしたちは、6月から10月に開催されるファッションウィーク期間中に、ミラノのPrincipe di Savoia (プリンチペ・ディ・サボイヤ)、パリの Le Meurice (ル・ムーリス)、ロンドンの Dorchester (ドルチェスター) をはじめとする、Dorchester Group のホテルに泊まらないよう呼びかけています。4月22日より執行されるブルネイの新法案は、到底許容されるべきものではありません。」とコメントしている。

アメリカ社会の中で、リンチ(私刑)を求めるような憎しみの心が高まっているようだ。
米モジラ財団のCEO、ブレンダン・アイク氏が今月3日、自身が創設の立役者となった同財団のCEO職を辞任することを余儀なくされた。彼の罪とは一体何か?2008年にカリフォルニア州での同性結婚を禁止する州憲法修正案修正案を支持して、1000ドルを寄付したことが問題視されたからだ(関連記事:Firefoxの「モジラ財団」CEOが同性婚問題で辞任)。

どうやら同性愛者の活動家たちは、「共生」という寛容の精神を守る気が全くないらしい。自分たちが同性婚を訴えているときには支持しているようであったが。彼らの目標としている新しい社会的秩序というのは、自分たちの性生活を肯定し、かつ普通で健全なものとして推進し、またそれに疑いを投げかける者は誰であれ不健全とみなすことなのだ。さらに言えば、彼らの目標は、新しい道徳的価値観に疑問を呈したり反論したりする者を、まるで昔のKKK(クー・クラックス・クラン、※1)のような偏見でもって疎外することのようだ。

それは言い過ぎだと思うなら、ブレンダン・アイク氏に対する彼らの魔女狩りのような振る舞いを見ればよい。

(ジョージ・オーウェル(※2)風に言えば)いまや文化的風土がゲイの「思想警察」を支持する方向に傾いているようだが、彼らは温厚そうな仮面を脱ぎ捨て、寄付金リストや嘆願書などの記録をはじめ、アメリカの言論の自由を表すものを、次々に容赦ない勢いであさっているようだ。彼らの目標は、同性婚に反対したことがある者を暴き「ばらす」こと、そして彼らを「扇動家」として非難することだ。こうすることで彼らは、自分たちに反対する者は社会的な嘲笑を受け、職を失うと脅し、反対の声を黙らせようとしている。

モジラ財団のミッチェル・ベイカー会長は、声明を発表したが、この声明こそまさにオーウェルが描いた世界を表している。ベイカー会長はこう述べた。「私たちは、幅広く多様な見解を持つ色々な社員を抱えています。私たちの文化は開放的で、社員にも地域社会にも自分たちの信条や意見を公に述べることを奨励しています」

そうだろうか?ここで約束しているような開放性や言論の自由は、「ある特定の」話題に関する「ある特定の」場所での「ある特定の」社員に限るということではないのか。モジラ財団の開放性には、ブレンダン・アイク氏と彼の見解は明らかに含まれないのだから。このようにして言論の自由と、そして人間の良心は失われていくのだ。犠牲者が一人ずつ消えていく。

新たなマッカーシズムがアメリカ社会の中で起こっている。ゲイの思想警察が、自分たちの性生活に反論したり、異を唱えていると思われる者を誰でも問い正している。「お前は、現在またはこれまでに、同性結婚に反対したことがあるか」と。もし疑いの余地なく否定されない場合は、「ブラックリスト」行きで、社会的、経済的に不愉快な思いをすることになる。

今こそ、本当に自由を愛する、善意ある人達が――異性愛者であろうと、同性愛者であろうと、両性愛者であろうと――立ち上がって、声高く叫ぶべきだ。「もううんざりだ!我々の同胞の良心と言論の自由を踏みにじる者は許さない」と。

※1 クー・クラックス・クラン(Ku Klux Klan=KKK):アメリカの白人至上主義秘密結社。
※2 ジョージ・オーウェル(George Orwell、1903〜1950):英国の作家、ジャーナリスト。代表作の小説『1984年』では、スターリン体制下のソ連を連想させる全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖を描いた。

 

リチャード・D・ランド(Richard D. Land)

1946年生まれ。米プロテスタント最大教派の南部バプテスト連盟(Southern Baptist Convention)の倫理および宗教の自由委員会(Ethics & Religious Liberty Commission)委員長を1988年から2013年まで務める。米連邦政府の諮問機関である米国際宗教自由委員会(USCIRF=United States Commission on International Religious Freedom)の委員に2001年、当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領から任命され、以後約10年に渡って同委員を務めた。2007年には、客員教授を務めている南部バプテスト神学校がリチャード・ランド文化参加センター(Richard Land Center for Cultural Engagement)を設立。この他、全米放送のラジオ番組『Richard Land Live!』のホストとして2002年から2012年まで出演した。現在、米南部福音主義神学校(Southern Evangelical Seminary)校長、米クリスチャンポスト紙編集長。

インドの最高裁判所は4月15日、身体的な性と自らの性認識が一致しないトランスジェンダーの人々を「サードジェンダー(第三の性)」として認めた。

「自分のジェンダーを自分で選択する権利は、すべての人に認められるべきものだ」。インド最高裁判所は、自らを男性でも女性でもないと見なしている人たちに対し、彼らの権利を認める判決をした際、そのように述べた。

最高裁は同国政府に対し、トランスジェンダーの人々にも、ほかのマイノリティーの人々同様に、雇用や教育、そして生活に必要なあらゆる製品や設備において、一定の対応枠を設けるよう命じた。

最高裁の判決を喜ぶ、インドのトランスジェンダーたち。

AFP通信の報道によると、この裁判は、インド出身の女優であり、トランスジェンダーの活動家でもあるラクシュミ・ナラヤン・トリパティ氏が代表を務める団体が2012年、インド国内のトランスジェンダーの人々に平等な権利を認めるよう、提訴していたものだ。

最高裁の決定は、自らが認める性とは異なる身体的特徴を持つ人々や、生まれた時に割り当てられた性別とは一致しない性的指向を持つ人々に適用される。インド国内には、およそ200万人のトランスジェンダーがいるとする推計もある(伝統的にヒジュラと呼ばれる人々がいる)。

なお、今回の最高裁による決定は、トランスジェンダーを第三の性として認める一方で、同性間の性行為を認めるものではないと明示されている。

デリー高等裁判所は2009年、同性間の性行為を無罪とする画期的な判決を下したが、最高裁判所は2013年12月、これを覆し、イギリス植民地時代以来の「同性間の性行為を禁止する法律」を復活させた。今回の最高裁の決定は、その決定に続くものだ。

153年前の植民地時代に制定された法律によると、インド刑法第377項には、同性愛は「自然に逆らう罪」であり、懲役10年の刑に処せられると規定されている。

なお、BBCの報道によれば、ネパールは2007年、バングラデシュは2013年に、「第3の性」を公的に認めている。オーストラリア最高裁も2014年4月2日、「第3の性」(不特定な性別)を認める判決を下している。

[(English) 日本語版:丸山佳伸/ガリレオ]

ウガンダ、同性愛行為に終身刑ニュース
24日、ウガンダ・エンテベで、同性愛に対する
厳罰化法案に署名するムセベニ大統領(ロイター=共同)

 
【カイロ共同】

アフリカ東部ウガンダからの報道によると、ムセベニ大統領は24日、同国で違法とされる同性愛行為に最高で終身刑を科せるとする法案に署名した。厳罰化の流れに、人権団体など国際社会から批判が出ている。

新しい法律は、同性愛を助長するような行為も違法としたほか、国民に同性愛者を告発することを義務付け、「悪質な同性愛」には終身刑を科せるとしている。

ウガンダでは同性愛行為は犯罪で、従来の法律は最高で禁錮14年の刑を規定。さらに厳罰化する条文を盛り込んだ法案が昨年12月、議会で可決された。法案は当初、死刑も科せるとしていたが、修正された。

2014/02/25 00:28 【共同通信】

2011.05.18 Wed

ウィキリークスが切り開いた新しい社会

政府や大企業のもつ機密文書を広く一般に公開するために設立されたウィキリークスが、米国外交文書などをそれまでなかった規模で暴露し、国際的に大きな注目を集めたのは、昨年の夏から秋にかけての頃だった。当初、それらの文書が公開されれば、米国やその他各国の外交的利益が損なわれるだけでなく、文書のなかで言及されている人権活動家の情報などが抑圧的な政権に知られてしまうことにもなり、かれらに危害が加えられることを懸念する声もあった。

しかし実際のところ、ウィキリークス自身が何もかも片っ端から公開するのではなく、既存メディアのジャーナリストと協力し内容を吟味したうえで公開する方針をとったこともあり、懸念されたほど大きな弊害は起きていない。

結局、ウィキリークスが公開した文書には、国際記事を普段から読んでいる人なら「政府はそう表立っては言わないだろうけれども、まあそういうことなんだろうな」とあらためて納得させられるような内容が多く、意外性のある暴露はそれほどなかったように思う。あれだけ大きな衝撃をもって受け取られたわりには、これまでのところウィキリークスの直接の影響の大半は、一部の政府要人や外交関係者が恥をかいただけで終わっている。

ところが三月末、ウィキリークスとはまったく別のところで「ウィキリークスが切り開いた新しい社会」が牙を剥き出した。ウィキリークス本家とはまったく無関係だが「ポルノウィキリークス」を名乗る匿名の人物もしくはグループが、医療機関から流出したと思われる性病検査データベースなどをもとに、米国においてアダルトビデオに出演している、あるいはしていたことのある数万人もの男女俳優の本名やその他の個人情報を暴露するサイトを設置したのだ。

ポルノウィキリークスとは?

サイト自体はインターネット上の百科事典・ウィキペディアと同じシステムを採用しており、誰でも自由に内容を追加したり、過去の編集履歴をみたり、ある項目について議論を行なったりすることができる。

もっとも数万件あるポルノ出演者のページのほとんどは、ある出演者の芸名と本名を結びつけるかたちで事実として記載されているだけだ。しかしポルノ出演者や元出演者たち、とくに女性にとっては、出演時の芸名と自分の本名が結びつけられて誰でも閲覧できる状態になっていることは、たとえ数万件あるページのうちのひとつでしかなかったとしても、身体的な危険を感じるのに十分だ。

当然、多くのポルノ出演者たちは、公式サイトやツイッターなどにおいてこのサイトを一斉に非難した。また、サイトの掲示板に直接出向いて個人情報を削除してくれと書き込む人や、誰でも編集できるのを利用して自分の本名を記事から削除する人もいた。

しかしそのような行為はサイトへの攻撃とみなされ、逆にサイト運営者やその支持者らによって、住所や家族構成や犯罪歴の有無やポルノ以外の経歴などの個人情報を詳しく調査・暴露されたり、出演していたアダルトビデオの静止画をアップロードされるなど、さらに集中的に嫌がらせを受けることとなった。公開しているわけではない個人情報を一方的に晒されたあげく、泣き寝入りするのがいまのところ最善の対処というのが現実だ。

ゲイポルノ男優たちへの敵視

サイト運営者によれば、このサイトから個人情報を削除する方法は非常にかぎられている。まず第一に、アダルトビデオに出演しようとしたことがあるためにデータベースに名前が掲載されてしまったが、実際には出演したことがない人は、そう申し出れば個人情報を削除してもらえる。ただし虚偽によってそう申請した場合は、容赦なくさらなる個人情報を暴露されることになる。第二に、アダルトビデオに出演したことがあるけれどもすでに引退している人については、かれらの主張に同調することを示せば削除するという。

かれらの主張とはなにか。同性愛者やユダヤ人に対する読むに堪えない差別的表現をなんとかスルーしつつ読み通してみたところ、次の通りらしい。まずかれらは、アダルトビデオやポルノに反対ではない。このインターネットが一般化した時代に、ポルノに出演したことのある人たちが、その後過去を隠して生きられるなどと思うなよ、とはいっているものの、ポルノ出演者にとくに敵意を抱いているわけではなく、むしろポルノ女優には感謝しているという。

かれらがことさら敵視するのは、ゲイポルノに出演している男優たちだ。ゲイ男性向けのポルノと異性愛男性向けのポルノの両方に出演する男優がいるせいで、ゲイ男性向けポルノの業界から異性愛男性向けポルノの業界にエイズがもたらされ、すべてのポルノ俳優の健康が脅かされている、とかれらは主張している。

異性愛男性向けのポルノを制作する業界では、アダルト業界専門のクリニックによる徹底した検査によって、二〇〇四年に一度HIV感染が起きたほかは、これまで長いあいだHIVの蔓延を防いできた。しかし、昨年ふたたびその検査によってある男優のHIV感染が確認された。そのさい、感染した男優の名前や、過去数週間のあいだにかれと撮影をともにした(すなわち、かれから感染したおそれのある)俳優たちのリストは公表されなかったが、それらの情報をどこからか入手してインターネット上で公開したのが、「ポルノウィキリークス」の前身にあたるウェブサイトだった。男優は、ゲイ男性向けのポルノにも出演歴があった。

HIV感染への異なった防御策

ここでいうアダルト業界専門のクリニックは、米国において(ネット上の動画を除く)アダルトビデオの大部分が制作されるカリフォルニア州サンフェルナンドバレーに存在している。サンフェルナンドバレーは有名なロスアンヘレス地域の中心部であり、ポルノ業界の中心地でもあることから、「ポルノバレー」あるいは「シリコーンバレー」(テクノロジーで有名な「シリコンバレー」と、豊胸手術に使われるシリコーンジェルをかけている)の異名もある(地元住民は普段ただ「バレー」と呼ぶが)。

このクリニックでは、異性愛男性向けポルノ業界で働く男女の俳優たちほぼ全員の性病検査とその結果を--直接行なっているか、他のクリニックで行なわれた検査の結果を登録しているかは別として--一括管理している。

クリニックは異性愛男性向けアダルトビデオ業界の主だった制作会社と協力関係にあり、これらの業者の作品において仕事をもらうには、クリニックによりHIVに感染していないと認定されなければいけない(ただし他人との絡みが含まれない撮影はこのかぎりではない)。定期的な検査によってHIV感染が確認された場合、過去にさかのぼって感染の可能性がある俳優がリストアップされ、感染していないことが確認されるまではかれらは次のビデオに出演することができなくなる。こうした仕組みによりHIV蔓延は防げるとして、業界はコンドーム使用の義務化を長年退けてきた。

いっぽうゲイ男性向けポルノの業界では、まったく違った慣行が存在している。ゲイ男性向けのアダルトビデオにおいては、出演者がHIVに感染しているおそれがある、という認識があたりまえに共有されており、むしろコンドームの使用が標準だ。そのかわり、クリニックにおける一元的な健康管理は行なわれておらず、コンドームさえつければHIVの感染の有無を確認せずにポルノへの出演が可能だ。しかしコンドームは完全ではないし、なかにはコンドーム使用すらしない撮影現場もあるため、HIV感染は起こりうる。

このように、異性愛男性向けポルノの業界と、ゲイ男性向けポルノの業界では、HIVという危険に対してそれぞれ独自の慣行が自然発生的に発達してきたが、ある日クリニックで性病検査を受けた男優が、次の日にはコンドームをせずにゲイ男性向けポルノに出演し、そのまた次の日には異性愛男性向けポルノで女優と共演するというような状況は、それぞれの業界における個別の慣行が想定していなかった事態であり、改善の余地があるだろう。いまのままではアダルトビデオ出演者の健康が守られない、という批判はあたっている。

問題を深刻化させた「子どもの性的搾取防止」をかかげる連邦法

その点、「ポルノウィキリークス」運営者の主張にいくらか正当性があることを認めたとしても、それと「手に入るかぎりすべてのポルノ出演者の個人情報を暴露する」という行動は結びつかない。

今回公開されたデータの元がクリニックの医療記録だとすると--それ以外にポルノ出演者の個人情報が入っているこれだけ大きなデータベースはありえない—たんにサイト運営者が「秘密主義で無責任だ」と批判するクリニックを困らせるために、出演者の個人情報を利用しているだけのように思える。現にそれらの情報がサイトに掲載されてすぐ、クリニックは施設改装のためという口実でしばらく閉鎖されてしまった。

しかし医療記録の公開から「クリニックへの嫌がらせ」という意図を読み取ったとしても、それでも説明がつかないことがある。それは、医療記録に追加して、医療記録には記載されていないはずの個人情報(たとえば住所)や、ポルノ出演者たちの運転免許証のコピーまでもが公開されていることだ。これらの情報はクリニックのデータベースにはそもそも保存されておらず、クリニックが情報源とは考えにくいのだが、いったいどこから流出したのか?

じつはこれらの個人情報流出には、十八歳未満の未成年がポルノに出演する(させられる)ことを防ぐために制定された、「子どもの性的搾取防止」をかかげる連邦法が関係している。この法律により、アダルトビデオ制作者はすべての出演者の年齢を確認することが義務づけられており、そのさい書類への記入・署名とともに運転免許証やパスポートなど身分証明書のコピーを保存するよう決められている。もともと未成年のポルノ出演を防ぐために制定された法律であり、性労働者の権利を保護することは意図されていないため、個人情報保護の規定はとくにない。

それだけならまだ個別の業者が、自社の作品に出演した俳優の身分証明書のコピーを保存しているだけで済んだのだが(もしそれが公開されたら、どの制作業者から流出したのか即座に特定される)、この規制がDVDディスクそのものの製造、あるいは映像をインターネットで配信する業者など、直接撮影した業者だけでなくさまざまな関係者も対象としていることが、問題を深刻化させた。

ある作品に出演している俳優の個人情報や運転免許証のコピーを入手するには、制作会社になんらかの商売を持ちかけるだけでよい、というお手軽さだ。しかも、ポルノに出演しようとする十七歳や十六歳の未成年は、偽造免許証を使うなり、姉や別人になりすますなどして、簡単に「十八歳以上」の年齢を示す身分証明症を提示することができるので、そもそもこうした法律が未成年保護のために有効かどうかも怪しい。

法的に追いつめることは困難

法律の話をするならば、ポルノ出演者たちがサイト運営者を裁判に訴えることはできるのだろうか?米国政府が本家ウィキリークスをあれだけ徹底的に攻撃する姿勢をみせながら、いまだにウィキリークス創始者ジュリアン・アサンジを法的に追いつめることができていないのと同じ理由で、「ポルノウィキリークス」運営者を法的に追求するのも困難だ。

まず第一に、サイト運営者が米国国内にいるとはかぎらない。国によって個人情報保護の法律は違うし、米国にいない相手を仮に米国で訴えてもそもそも訴えが認められるかどうか分からないうえに、勝ったところで実効性が期待できない。とはいえサイト運営者が住んでいる国で裁判するのは、コストがかかりすぎて現実的ではない。

第二に、もしクリニック内部の人がデータベースをリークしたのであれば個人情報保護法の対象となるが、流出したデータを受け取って公開しただけのサイト運営者の責任は問えない。サイト運営者を追いつめるには、サイト運営者自身が流出に関与したと証明しなければいけないが、これは困難だ。米国政府も、ウィキリークスに非公開文書を流出させたとされるブラッドリー・マニング上等兵は逮捕したものの、アサンジらウィキリークス側がマニングに犯行をうながしたとは証明できずにいる。

第三に、ある芸名で知られている人の本名はこうである、という記事は、たんなる事実の指摘にすぎないのであって、誹謗中傷や名誉毀損とは米国では認められないであろうということ。もっとも個別のページには、特定の俳優がHIV感染者だとか、ある女優はポルノに出演しているだけでなく売春婦でもあると書かれていたりするので、もしそれらが事実でなければ賠償請求は認められるかもしれない。しかしそれでは個人情報のすべてを削除させることも、サイトそのものを閉鎖させることもできない。

インターネットとウィキのある社会における人権擁護

それでも訴訟社会の米国のこと、近いうちに何らかの裁判は起きるだろうし、もしかしたら新たな法理論を採用することによって(あるいはサイト運営者側の自滅によって)サイトを閉鎖に追い込むことができるかもしれない。

けれども、ウィキリークスが開き、「ポルノウィキリークス」が一度通ってしまった扉は、もう閉ざすことはできないだろう。性労働者だけでなく、性的少数者、精神科を受診している人や犯罪歴がある人、日本なら被差別部落の出身者や日本名を使っている在日コリアンなども含めて、個人にまつわる事実がありのまま公開されるだけで--すなわち、とくに嘘をついたり本人に不名誉な悪口を書かなくても、「○○○は×××である」という、それ自体は本来どうってことないはずの事実が書かれるだけで--第三者による身体的危害や差別的な扱いが引き起こされかねないのが現実だ。

そういう世の中になってしまったことを踏まえて、また政府がそれに便乗してウィキリークスのような新しいジャーナリズムの試みを弾圧する口実にしないように注意しつつ、インターネットとウィキのある社会における人権擁護についてあらためて議論したほうがよさそうだ。

また、未成年の性的搾取を防ぐことを意図された法律が、多くの性労働者たちの安全とプライバシーを脅かしているだけでなく、実際に未成年の性的搾取を防ぐことには役に立ちそうもないという事実は、「子どもを守るため」という口実で提案されるさまざまな規制--最近では、たとえば東京都の改正青少年健全育成条例--に対して、目的の正しさに惑わされずに、実際にそれがもたらす影響をきちんと検証する必要があることを示している。